業界人インタビュー
【ENDROLL】「同じ気持ちの人間は、どこかに必ずいる。」グッチーズ・フリースクール主宰(教頭)降矢聡さん ~後編~
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回も前回に引き続き、映画の配給や自主上映会を行うグッチーズ・フリースクールの主宰(教頭)、降矢聡さんにインタビュー!かねてより、降矢さんの活動をウォッチしている、
後編では、近年の日本での自主上映や個人配給の広がり、配給宣伝と映画館の新たな協働の可能性、批評と絡めた上映の取り組みなどへと話は及んだ。
自主上映活動の波及
KIQ: 2017年に行われた「ほぼ丸ごと未公開!傑作だらけの合同上映会」では、ほかに上映会に関心のある人を募って、権利交渉の手順を共有し、周囲に広げようとする試みもされていたように感じます。
降矢: 3年ぐらいやってみて、これは個人でもできるという感触があったのと、時々、「上映会をやってみたい」と言ってきてくれる人だったり、関西の方から「グッチーズさんがやった映画を上映してみたい」という相談もいただいたり、こういう活動をやりたい人は結構いそうだなという感覚があったので、自分たちのやり方をシェアして、何かわからないことがあったら聞いてくれればわかる範囲で手伝うので、興味のある方は一緒にやりませんかみたいな声かけをして、合同上映会をやりましたね。
KIQ: 印象としては、例えば、『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』(2022)を配給されているイーニッド・フィルムさんなど、グッチーズさん以降に上映活動をする人だったり、個人配給をするような人も増えてきたように思います。
降矢: イーニッド・フィルムさんは2人でやられているんですけど、そのうちの1人は早稲田の別の映画サークルの後輩でした(笑)。もう1人はグッチーズでよく字幕をつけてくれていた人。ある日、2人から自分たちもやってみたいと相談を受けて、お金はこれぐらいでこういう規模感でやってるよとか、こういうところに連絡をすればできるよとか、字幕はこういう風につけてるよみたいな話はしましたね。
KIQ: ほかにも近い関係で活動を始められた人はいますか。
降矢: 映画チア部さんっていう関西のミニシアターを応援する学生たちの団体があって、神戸と京都と大阪に支部があるんですが、大阪支部の子たちが、上映イベントを京都でやったときに見に来てくれて。初めは僕がそのときに上映していた作品をやりたいって話でしたが、最近では、自分たちで配給もやられ始めた。僕が直接そういう関わりを持っているのはその2つですかね。
KIQ: なぜそのような動きが生まれていると思いますか。
降矢: たぶんちょうど映画が個人で上映しやすくなってきた時期だったのかなと思います。気軽にFacebookとかネットで海外の権利元と連絡が取れたりするような環境になり、素材のやりとりもオンライン上でできるし、プレミアという編集ソフトでDCPまで自宅で作れるようになった。そういう環境が整ってきた早い時期に僕たちは活動を始められることができたのかもしれません。
KIQ: 映画会社じゃなくてもできるんだと思わされます……!基本的に作品選定は降矢さんお一人でやられてるんですか。
降矢: そうですね。ただ、上映会の場合は企画に沿ったもので、よりぴったりの映画はないかと知り合いの映画好きと相談やお話はよくしています。最近は劇場さんからこういう映画をやりたいと話があったり、ほかの配給会社さんから「こういう映画があるんだけど一緒に配給しませんか」みたいな話が多くなってきています。
配給会社や劇場とのコラボレーション
KIQ: 2024年は『美しき仕事 4Kレストア版』(1999)『ピクニック at ハンギング・ロック』(1975) 『70/80年代 フランシス・F・コッポラ 特集上映 ―終わらない再編集―』と旧作の配給をされましたが、それらは自分発信というよりも声がかかったものということになりますか。
降矢: そうなんです。かなり攻めたラインナップの配信サービスをやられているJAIHOさんが、劇場公開まで含めた配給もされるようになって、その中に気になるものがありますかと声をかけてもらって。権利購入済みのラインナップを見させてもらいながらお話をしていく中で、『ピクニック at ハンギング・ロック』などのお手伝いをさせていただくことになりました。
KIQ: なぜほかの配給会社からグッチーズさんに一緒に配給しないかと提案があると思われますか。SNSでの訴求力が求められてのことでしょうか。
降矢: 宣伝力なのか、自主的に活動していたのを面白がってくれてなのかわからないですが、もしかしたらグッチーズのやり方が通常の会社さんのやり方とはちょっと違うのかもしれなくて。そういう部分を期待してくださってるのかもしれないですね。
KIQ: 配給だけじゃなくて、宣伝的な部分も一からやられていったということですよね。
降矢: そうですね。ただ、宣伝って本当に何をやればいいのか難しいですよね……プレスリリースを書いて、予告とかを作って、誰かにコメントをもらってっていうのを公開前まで2ヶ月間ぐらいでやって、なんか毎回同じことをやってる感じもしますし。監督を呼べる規模じゃない洋画の配給だとやることは限られてるし、どうすればいいか僕も未だによくわからないです。
KIQ: 活動をされている中で、やりがいはどういうところに感じていますか。
降矢: 最初のきっかけは、この映画がなんで日本で公開されないんだ、みたいなもどかしい気持ちからでした。自分がこれを見たいと思っている世界で唯一の人間じゃないだろうと、自分たちで何でもやってみよう精神じゃないですけど、見たい気持ちの延長で自分たちでアプローチしてやってみたら案外できるということがわかった。自分が見たい映画をこういう風な紹介をされていたらいいなという見たい形で上映して、それに面白いと反応してくださる人がいるのがモチベーションにつながりました。そういう人たちが少しずつ増えれば、いろんな人が見たいと思っていた映画がどんどん見れるいい環境になっていくかもしれないというのが、ぼんやりした大きなビジョンとしてはありました。
最近はそれに加えて、京都シネマさんや下高井戸シネマさん、菊川のStrangerさんなどと組んで、映画館さんごとの独自の特色が出るような企画にも面白味を感じています。映画館さんが普段の劇場業務もある中で作品の交渉までするのは大変だと思うので、そこをお手伝いしながら、コラボレーションすることによって何か新しい興行のひとつの形ができていけば面白いかもしれないし、映画館さんとのそういう関わりはすごい意味がありそうだなといま思っているところですね。1月からシネマート新宿さんでも「コケティッシュゾーン」と称した特集上映で『シリアル・ママ』(1994)『死霊のはらわた』(1981)『プリシラ』(1994)を上映しているので、ぜひ見に来ていただきたいです。
KIQ: 今後のグッチーズさんの展望としてはほかにありますか。
降矢: 映画の紹介の仕方ももっとうまいことできないものかと思っているんですが、いまって全体的に映画批評を求める熱みたいなものがどんどんなくなってる感じしません?
KIQ: それは感じています……!
降矢: そうですよね……ちょっとおこがましいんですけど、若い研究者や批評家と何かうまいこと絡めないか──テキストをちゃんと読めたり、トークがあったり、面白いと思っている監督や作品を集めたりできないか、批評や研究の面白さに触れられながら一緒に盛り上がれるような上映イベントがいつかできたらいいなとは思っています。
KIQ: グッチーズさんは、これまでもトークや書籍を通して、批評とかも絡めて上映活動をずっと続けてこられたように見ているので、そういったところは素敵だなと思っています。
降矢: ありがとうございます。それは意識していたことなので嬉しいです。
★【ENDROLL】「未公開映画上映会の作り方」グッチーズ・フリースクール主宰(教頭)降矢聡さん ~前編~
【Information】
悪魔の扉が今、開かれる!
『死霊のはわらた』
<2週間限定> 2025年2月7日(金)〜2/20(木)
シネマート新宿にて限定上映
多くの映画ファンからスクリーンでの上映を待望されながらも長らく様々な事情により上映が叶わなかった滅多に観ることのできない作品、ジャンルを問わず3作を集めた特集上映、その名も「コケティッシュゾーン」 第二弾は2/7(金)〜2/20(木)の2週間限定で『死霊のはわらた』を上映!
【日程】『シリアル・ママ』 2025年1月3日(金)より2週間限定上映
【場所】シネマート新宿
【チケット料金】通常料金 ※各種サービス適用
【チケット販売】上映開始2日前よりオンライン・窓口にて販売
シネマート新宿オンラインチケット予約サービス
https://www.cinemart-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php
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