プロが見たこの映画
宣伝担当が語る「自分の居場所」NEW
“自分の居場所”があるっていいなと思っています。
“居場所”というと、物理的な空間を意味する場所と、心の支えや拠り所という心理的な意味での場所という両方がありますね。
わたしの場合で言うと、ひとりの人間として一応住む家があり日々の生活はできているので物理的な居場所はある、ということになります。じゃあ、心理的な意味での“居場所”があるのか?と考えると、ある!と自信を持って言えない(なんとも悲しいのですが…)のが現状です。住む場所があり一日仕事を終えたあと帰る家があっても、心理的な居場所がないとなんだか満たされていないような気がしてしまう日々でした。
そんなゆる〜くなんとなく毎日を過ごしていたわたしの羨望の的となったのが、絶賛公開中の『サンセット・サンライズ』の主人公です。
菅田将暉さん演じる西尾晋作(34歳)は、東京の大企業勤務で実家暮らし。これで物理的な居場所はまずクリアしてますね。これだけでも羨ましい要素は十分あるのですが、コロナ禍でのリモートワークをきっかけに、趣味の釣りを満喫するべく東北の南三陸へ“お試し移住”を決めます。
移住先の田舎町では、東京から来た〈よそ者〉としてはじめは警戒されていた晋作ですが、持ち前のポジティブで明るくいい意味で能天気な性格で、いつしか地元の人たちにも溶け込んでいきます。仕事も趣味も満喫しながら移住ライフを楽しむ晋作は、移住先の大家である井上真央さん演じる百香に惹かれていき、物語のラストに、ある人生の大きな選択をすることになります。晋作(と百香たち)が出した答えは、とても現代的ですべての人に理解される答えではないのかもしれません。それでも自分に正直にわがままに人生を楽しもうとする先で“居場所”を見つけた晋作は、とにかく幸せで充実していて眩しく見えました。ただ、晋作が人生の選択をするまでには、様々な問題も避けては通れません。
田舎の住民たちは、よそ者扱いするくせに過干渉でとにかく強烈な人たちばかりです(笑)。三宅健さん、竹原ピストルさん、山本浩司さん、好井まさおさん演じる百香に思いを寄せるこじらせ独身男たち4人は、晋作の家に勝手に上がり込みふたりの仲を勘違いして晋作を投げ飛ばすし、池脇千鶴さん演じる百香の同僚の仁美は、仕切りたがり屋で晋作をけしかけ大事な告白も晋作が言う前に言っちゃったり、町を歩けばその行動すべてがビートきよしさん演じる情報通の重蔵さんに監視されていたり…東京生まれで田舎という田舎がないわたしからすると、なんだか面倒くさいなぁとか失礼ながら思ってしまっていたのですが、一度心を開けば本当の家族のように、時には家族以上に近い関係を築いていく姿を見ていると、だんだん羨ましくなっていました。
最初は慣れない環境に戸惑っていた晋作ですが、誰に対しても分け隔てなく素直に向き合う姿を見せることで、いつしか移住先で出逢った人たちも晋作にとっての大切な家族となり、心の拠り所としての“居場所”となっていくのです。
「自分には居場所がない」という漠然とした不安や悩みを抱えた経験がある人もいるのではないでしょうか?周りの目が気になってしまったり、気を使って本音を言えなかったり…我慢をしてしまって余計に息苦しくなってしまったこともあると思います。そんな時には、思い切って自分のことだけを考えてわがままになってみる。自分の“好き”という気持ちだけに従ってみると、きっと今までの生きづらさから、少し抜け出すことができるかもしれません。誰かを大切にする前に、まず自分が自分を一番大切にしてあげる、そこから始まる新しい幸せがあるということを、この作品を通して感じました。わたしも “自分の居場所”を見つけていきたいと思っています。
皆さんもそんなことを劇場で感じていただけたら嬉しいです。
『サンセット・サンライズ』宣伝担当
『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』
2024年11月29日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー
出演:森且行
ナレーション:萩原聖人
監督・編集:穂坂友紀
エグゼクティブプロデューサー:津村有紀
プロデューサー:青柳朋子 鴨下潔 石山成人
総合プロデューサー:松田崇裕 小池博
協力プロデューサー:塩沢葉子
製作:TBS 企画・制作:TBSテレビ報道局 報道コンテンツ戦略室
制作プロダクション:TBSスパークル
配給:KADOKAWA 宣伝:KICCORIT
【2024年/日本/94分/5.1ch/16:9】 ©TBS
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