調査レポート
FOXが消えた! FOX最大の遺産「スターウォーズ」とそのファンについて考える。
「スーサイド・スクワッド」の女優マーゴット・ロビーがSNSでこんなこと言ってます。
「私がまったく「スターウォーズ」を観ていないことにブチ切れる人がいて、それが面白くて、今でも観てないんですよね。私の夫もめちゃくちゃ怒ってます」
何かちょっとわかりますよね。「スターウォーズ」ってのは、ワールドワイドでオールターゲットの人気を誇るイベントムービーでありながら、とてつもなくコアな、そして面倒なファンがいる。
そして、正月興行を経て日本での興収が60億円を超えてきて、この後の伸びが気になるところで、遂にディズニーは「20世紀FOX」の名を消して、「20世紀スタジオ」とする発表をしました。消え去る「20世紀FOX」最大の遺産ともいえる「スターウォーズ」。この決断は当然「スターウォーズ」シリーズの完結を契機としてだったと思います。
今回はそのあたりを左右するほどの「スターウォーズ」のファンについて少し考察しましょう。
- ○「KIQREPORT」調査:鑑賞者の性年代別「KIQREPORT」の調査では鑑賞者の性年代別の特徴について
- ・男性30代が最も高い。3割以上の人がスピンオフを含め全シリーズ作品を見ている
・10代と20代の女性は約半数が1作も見たことがない。
という結果が出てます。
10代20代の女性を映画に来ないのは、男性10代~20代が映画デートに誘ってないんじゃないかとも思えますが、ともかく全く「スターウォーズ」を観てない、マーゴット・ロビーのような女性は日本では珍しくないわけです。
次にファンの度合を性年代別をみてみましょう。
○「スターウォーズ」シリーズ鑑賞状況詳細
全体としては、約7割がSW好きということになります。
ところが「かなり好き」層の半分以上、全体の19.1%が「かなり好きだが、ファンとは公言できない」と言っています。どういうことでしょう?
「「スターウォーズ」にはあまりに熱烈なファンがいるから、ファンと自称するには、ちょっと気後れしてしまう」という理由は十分に想像できます。私もそうですし。
ところが「かなり好きだがファンと公言できない」と言っている人は40代以上の男性に多いのです。彼らは同じファンでもスターウォーズ歴が長い分、「気後れ」とかではないでしょう。むしろ落胆・怒りなど、ネガティブな感情をもっている可能性があります。つまり愛するあまり、昨今の「スターウォーズ」を認めたくない、ファンなどとは言いたくないという人々かもしれません。
これこそ長年にわたって溜まったスターウォーズファンの縮図。マーゴット・ロビーの旦那だと思います。
そもそも、「スターウォーズ」は根本的には70年代SFサブカル、いわゆるオタク層の映画でリア充の映画ではない。大成功し、アトラクションムービーに昇格した後も、なんとなくこういうの嫌いという女性がいても不思議はないし、EP2のぎこちない恋愛シーンが気持ち悪いとか言われるが、そんなのは作ってる奴がやってきてないのだから当然といえば当然なのです。
だからハリウッドメジャーきっての王道エンタメ会社ディズニーが、「スターウォーズ」を若い、これからのファン層の為のエンタメにシフトしていきたいと思ったとしても不思議はないでしょう。ただ、これには注意が必要でした。続三部作EP7「フォースの覚醒」は旧三部作のオマージュ要素をふんだんにつかってコアファンを興奮させ、大成功を収めました。ただここで油断したのか、次作EP8「最後のジェダイ」で厳格な世界観から一気に脱皮しようとして、大反発をくらいました。ロッテントマトでの批評家の評価は91%と高かったのに、公開してからの観客の評価は43%とメタメタ。興収も一気に落ち込んで前作の約70%に急落しました。7割というのは普通の映画の続編の標準的な落ち率だと言われてます。「スターウォーズ」は皮肉にも“魔法の王国”の一員になって、魔法が解けて普通の映画になってしまったようです。TOPBOXと言われるコアマーケティングの重要性を認識したディズニーはファンに不評な部分を外し、信頼性の高いJ.J.エイブラムズ監督に戻してシリーズ完結作「スカイウォーカーの夜明け」でのV字回復を狙います。案の定、批評家の評価は52%と大幅に下がりましたが、観客の評価は86%と急上昇しました。
■「スターウォーズ/最後のジェダイ」
■「スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」
ただし、観客は劇場に戻ってきませんでした。世界興収は前作比でマイナスです。
日本国内では「スカイウォーカーの夜明け」は正月興行No.1(1月5日時点で興収52.4億円、動員347万9,408人)。ほとんどのエンタメ記事はそれ以上のことは伝えませんが、実は前作比ではマイナスなのです。EP8「最後のジェダイ」の最終興収75億円だったことを考えると、本作は100億円にはとどかず、「ファントム・メナス」以降の作品の中で最低の成績になる可能性もあります。
不思議と不調な感じもしないのは、やはり魔法が消えたせいなのでしょうか?もはやコンテンツとしての実力相応なのかもしれません。
今回「20世紀FOX映画」から「20世紀スタジオ」への変更は当然「スターウォーズ」シリーズの完結を契機としたものでしょう。それほど「スターウォーズ」コアファンというのはやかましい、他の映画のマーケティグでは考えられない程、全体の興収に大きな影響を及ぼす可能性があったのです。
ですが、そんな時代もそろそろ終わりをつけているかのようです。“元ファン”たちが血道を注いでこだわり続けたのはルーカスの神話の残像であって、EP9の完結をもって、その影響は消え去るのではないかと思います。
新しい「スターウォーズ」はもはやルーカスからもFOXからも決別したものになるでしょう。
しかし、「20世紀スタジオ」ってどうもしっくりきませんね。
調査時期:2019年11月1日(金) ~ 11月8日(金)
調査対象:計776名 (全国15歳以上男女/映画コア・映画ライト)
調査定義:映画コア=半年に2回以上、劇場で映画鑑賞する人/映画ライト=年に1~3回、劇場で映画鑑賞する人
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