プロが見たこの映画

【最新配信エンタ】『パレード』死者の世界からこの世へ贈る、”会いたい”と思いを馳せる切なくも優しいパレードの旅。

2024-03-13更新

この世で唯一、誰も知ることができない世界がある。それは、死者の世界だ。死んだらどうなるんだろう?そんな疑問を抱いても、誰も答えてくれない。それもそのはず、生きている限り死後の世界を知ることなどできないのだから。そんな世界に、希望を託すことなどできるはずもない。だから私たちは、毎日後悔しないように生きている。けれど、人生は何が起こるか分からない。ある日突然、終わりがやってくるかもしれない。大切な人と永遠の別れをするかもしれない。逝ってしまった人、遺された人、彼らの想いはその日を境に途切れてしまうのだろうか。Netflix映画『パレード』は、そんな”悔いのないように生きる”ことを果たせなかった死者に優しく寄り添い、遺された人へ想いを繋ぐ。

瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)は、離ればなれになった息子を捜すなか、街ゆく人々に話しかけても誰も反応しないことに気づく。そんな時、アキラ(坂口健太郎)という青年と出会い、自分がすでに死者になったことを知らされる。美奈子がいる場所は、この世に未練を残した者たちがとどまる世界であった。美奈子はここで月に一度、新月の夜にそれぞれが会いたい人を探す死者たちの集い〈パレード〉に参加することになる。息子に会いたい、そして謝りたい。美奈子は自分の未練を晴らすために息子を探し続けるなかで、様々な人たちの心に触れていく。

本作には、美奈子やアキラのほかにもヤクザの勝利(横浜流星)や、スナックママのかおり(寺島しのぶ)、女子高生のナナ(森七菜)など、この世に未練を抱えた者が登場し、互いに支え合いながらそれぞれが残した未練と向き合っていく。その中の一人、映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)の未練は、制作していた自伝映画を完成できずにこの世を去ってしまったことであった。”映画を完成させたい”その未練を晴らすために、美奈子たちは動き出す。そして、その想いはその先の未来へと繋がっていく。この世と死者の世界、過去と今と未来。時空を超えて想いが交わっていくこの物語は、決して他人事ではない。むしろ、今を生きる私たちの物語なのである。

「ママが今いる世界ではね、みんなで助け合って会いたい人を一緒に探すの。パレードみたいに」

遺された人が会えない喪失感に襲われている間も、会いたくて泣いている間も、死者の世界では会えることを願って探してくれているのかもしれない。遺された人たちが大切な人を想うように、逝ってしまった人たちも大切な人を想い続けているのかもしれない。死者の世界でも、この映画の人たちのように笑いながら楽しい日々を過ごしているのかもしれない。ぜんぶ想像でしか言えない世界だけど、そんな世界があるのかも・・・そう思えるだけで心が救われる自分がいる。だからこそ、筆者はこの世界観をファンタジーとして片付けたくない。現実世界では、映画のようにこの世と死者の世界が交わる時間はないけれど、”会いたい”という想いは、決して遺された側の一方通行ではないと信じたい。今、大事な人を想いながら生きているすべての人にこの映画が届きますように。

Nami

 


Netflixで視聴する⇒こちら

【あらすじ】
瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子(長澤まさみ)。離ればなれになった息子・良を捜す彼女は、道中で青年・アキラ(坂口健太郎)や、元ヤクザの勝利(横浜流星)、元映画プロデューサーのマイケル(リリー・フランキー)とその仲間たちと出会う。ここは“想いを残した者たちがとどまる世界”だった。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を探す“パレード”に参加したことを機に、各々の心に触れていく。それぞれの秘密と哀しみが癒されたとき、一筋の希望が生まれるーー。

【キャスト】
長澤まさみ
坂口健太郎 横浜流星 森七菜
黒島結菜 中島歩 若林拓也/ 深川麻衣 でんでん
舘ひろし(特別出演)/ 北村有起哉木野花奥平大兼
田中哲司寺島しのぶ
リリー・フランキー

【スタッフ】
脚本・監督:藤井道人
撮影:今村圭佑
音楽:野田洋次郎
エグゼクティブプロデューサー:坂本和隆
企画:河村光庸
プロデューサー:佐藤菜穂美道上巧⽮⾏実良
制作プロダクション:BABEL LABEL
製作:Netflix

 

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