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【KITT RADIO #4】映画館で映画を観る“価値”
マーケティング目線で世の中を見ると、見えるものが変わってくる!
映画の宣伝プロデューサーが日々考えていることをあれこれ雑談す
「KITT RADIO|マーケティングあれこれ雑談」
出演:木村徳永さん(KICCORIT)、ターニャ&シーニャ(KIQ REPORT編集部)
<#4のキーワード>
・高級レストランのご飯を家で食べる
・経験と体験の違いってなに?
・「ご飯を早く食べるには?」悩んだら分解
気になるキーワードがあったら下記をチェック!
【Spotify】
番組では宣伝プロデューサーに聞きたいことなど、リスナーの皆様からの質問も募集中!
その他、ご意見・ご感想はこちらまでお寄せください。
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【YouTube】
【Text】(文字起こし)
ターニャ
この番組は、映画の宣伝プロデューサーが日々考えていることを話す番組です。マーケティング目線で世の中を見ると見るものが変わってくるということで、本日もキコリの木村さんをお招きして放送して参ります。
「前回は期待感の煽り方」についてお話をしていただきまして、最後に映画館で映画を観る価値の重要性についてお話していただいたんですけど、実際その価値っていうのをどうやって作っているか、お伺いしたいなというふうに思うんですけど、映画館で映画を観る価値ってどうやって作っていらっしゃるんですか。
木 村
難しいですよね。
なんで難しいかっていうと、
映画館でも見れるけど、ちょっと待てば配信でも同じ映画が見れるので、わざわざ映画館に来てもらって、その1本だけの映画に対してお金を払って見てもらうっていう行為をしてもらうには、何かそれなりの価値がないと、配信じゃなくて映画館に行かなきゃっていう気持ちにはなかなかならないと思うんですよね。
ターニャ
うん、うん、そうですよね。
木 村
価値って何かっていうと、希少性っていうのが価値になるじゃないですか。
ターニャ
はい。
木 村
例えば有名なアーティストの展覧会みたいなことでいうと、そこに行かなきゃ見れない、これはもう東京でしかやってないとかそういう希少性の価値があるから、そこにわざわざ行くっていうことですけれども。
ターニャ
はい。
木 村
映画って希少性じゃないんですよね。希少性じゃなくて、どっちかっていうと利便性の方だから。全国津々浦々どこでも簡単にアクセスできる場所で、気軽に見に行けるっていうのがやっぱり映画の大ヒットする条件の一つでもあるので、希少性っていうより利便性。でも、映画の宣伝って利便性と結びつけていってしまうと、いやいや、配信の方が便利じゃん、だって家でいつでも見れるからってなっちゃうので、利便性は売りにはならないということなんですよね。
ターニャ
なるほど。
木 村
ではどうすればいいか?っていうと別の場所に価値を作らなければいけないと思っていてそれってやっぱり映画って体験だと思うんですよね。
ターニャ
体験。
木 村
体験って、その場に行かないと、味わえないもの、それが体験だとしたら、例えばわかりやすい例で言うと、高級レストランでご飯を食べるっていうことと、その高級レストランと同じ味の食事が家で食べられます、ていうのがあったとしたら、これって同じものを食べてるんだけど、全然違うと思いません?
ターニャ
確かに、なんか幸福感が違う気がします。
木 村
そうなんですよ。だから美味しいものを食べてるっていう行為だけじゃなくて、そこに行って食べたっていう経験が作り出しているもの、その全てが、体験になっていて、家で同じものを食べたっていうことって、食べたっていう単なる経験なんですよね。
ターニャ
なるほど。
木 村
だからやっぱりこの体験と経験っていうのは、大きく違ってると思っていて、体験って感情と結びついてるんだと思うんですよ。体験しないと感じられないメッセージを受け取れるっていうか。例えばレストランに行くとしたら、季節と紐づいたり、あの日寒かったなとか、誰といったのかっていうことと紐づいて、あのレストランの美味しかったご飯って、記憶の引き出しにインプットされるじゃないですか。
ターニャ
はいはい。
木 村
だから心にしっかりと、そういう全ての行為とともに、心にしっかり残るんだと思うんですよね。食べたっていうことだけだとしたら、いつもの変わらない日常の中に美味しいご飯だけが入ってきてるから、味だけで覚えるしかないじゃないですか。
ターニャ
確かに。はい。
木 村
そうすると、味だけなんて覚えてらんないんですよ。
ターニャ
そうですね。
木 村
高級レストランでご飯を食べたら何がよかったのかって言ったら、味だけじゃなくてそこに行って食べた、誰かと一緒に食べた、同じ時間を共有したっていうその体験自体が、ご飯を美味しくさせている一部でもあるわけじゃないですか。
ターニャ
確かに。
木 村
だから映画も同じように、映画館にもちろん1人で行く人もいるだろうし、誰かと一緒に見てる人もいるだろうし、その映画館に行くまでの、電車に乗ってるときの気持ちとか読んだ本とか、いろんなそういう立体的な記憶と一緒に映画を見たっていうことが記憶されてくると思うんで。
ターニャ
はい。
木 村
それって何かもう映画が面白かったとかご飯が美味しかったっていう引き出しじゃなくて、「思い出」っていう自分の引き出しに入ると思うんですよね。その思い出の引き出しを開くことができると、感じるものが違ってくると思ってて、面白かったかどうかっていう客観的な情報じゃなくて、リアルな自分の感情と混じって、しっかりと記憶に残るっていう感じがするので、やっぱりその体験、映画を見るっていう体験がどういう感情を生み出すのかっていうところが、しっかりと繋がってくるといいんじゃないかなと思ってて。
だから映画の価値っていうのは誰が作ったどういう映画で、誰が出てるかっていうそういう表面的な情報を伝えることだけじゃなくて、もうちょっと体験をすると、どんな価値が得られるのかっていう具体的なメッセージ、見終わったらどんな気持ちになりますよっていうこととか、あと作品によっては例えば、「頑張ることに疲れたなって思ってる人に見てもらいたい」とか、「大切な人と一緒に見て欲しい」とかそういう何か2次的な情報と組み合わせて伝えていくことで、面白いか面白くないかだけじゃない、別の心の引き出しが動くんじゃないかなっていう気がしてるんですよね。
だから物語の展開を追うっていうそういう期待のさせ方だけじゃなくて、心で感じる鑑賞を促すっていう、なんかそういう部分をアピールすることができると、良い環境でみたいな、誰にも邪魔されない環境でしっかりと、あの作品と向き合いたいなっていう気持ちが生まれてくると思うんで、そうすると配信じゃなくて映画館に行って体験しようっていうところに繋がるんじゃないかなっていうふうに思ってます。
ターニャ
なるほど、ありがとうございます。
意外とそうですよね。なんか、初めは情報で、映画の宣伝をテレビとか見てると情報だけ入ってきて、それで見るか見ないかみたいな気持ちにもなったりするんですけど、今聞いていて、何かその先の自分がちょっと心揺さぶられるとか、何かちょっと感情が動いたときとか、泣けそうだなとか思ったり、そこまでが伝わると確かに映画館に行きたいなっていうふうに自分も思うかもしれないなって今お話を聞いていて思いました。
木 村
自分がなんで映画を見に行くのかっていうのをちょっと考えたことがあって、何を求めてんのかっていうと、驚きと感動なんですよ、僕が求めてるのは。何か僕の中でエンターテイメントって、驚きと感動であるっていうふうに思ってて、だから驚いてもらいたい感動してもらいたいっていう気持ちがうまく届けばいいなと思いながら宣伝してるんですけど、その気持ちがちゃんと伝わって、こういう体験ができるよっていうのが伝わると、例えばこのキャストで、この内容だったら、本当は興味が湧かないんだけど、何か気になるなっていう作品って時々あるじゃないですか。
ターニャ
そうですね、はいはい。
木 村
普段全然アニメ見ないんだけど、なんかちょっと気になるっていうのはやっぱりそういう情報が見え隠れしたときに見たくなってきて、見に行ったときに、想像してないものが見れると、そこには驚きがあるし、その先には感動があって、いいもの見たっていう気持ちになったりすると思うんですよね。
なのでそんなことを考えながら、期待感を煽ってる。っていうお話でした。
ターニャ
はい、ありがとうございます。ここまで木村さんいろいろお話していただきましたけど、すごく何かわかりやすくお話をしていただいてすごいなというふうに思ってたんですけど、こういうふうに木村さんが今お話していることが何か整理されてるのって、どうしてですか?何かやってらっしゃるんですか?
木 村
なんかこういうのって、無意識な状態だと思うんですよね。例えば映画を選ぶときって、そんなに一生懸命、メッセージあるのかなとか、期待で煽られてるのかなとか、考えず無意識じゃないですか。なんでこの映画見たのか?と聞いたら、単純に「面白そうだから」っていう言葉にまとまっちゃうわけですよ。
ターニャ
はい。
木 村
でもそれを深く見ていくためには、何でもかんでも細かく分解していく、因数分解じゃないけど、パーツパーツに分けて物事を考えていくと発見があったりするんですよね。この間うちの子供が、ご飯を食べるのが遅くて悩んでて、どうやったらご飯が早く食べれるかっていうのを相談されたんですよ。でもご飯を食べるって無意識にやってるじゃないすか。
ターニャ
そうですね。
木 村
でも、それを分解してみたんですよ。そうすると、まずお箸でご飯とかおかずをつかむ。
それを口に運ぶ。噛む、咀嚼して、飲み込むっていうのが、ご飯を食べるっていう作業なわけですよ。
その時間を短縮したいっていうのが、目的じゃないすか。そうすると、摑むまでの動きを早くすればいいのか?とか、掴んでから口に運ぶまでのスピードを上げればいいのか?っていうと、そこじゃないんですよね。どこで時間が短縮できるのかっていうと、口に入れて噛んで、その食べ物が咀嚼されて小さくなって、ごっくんって喉を通過できる大きさにするまでの時間を早くするしかないわけですよ。短縮できる部分って。
ターニャ
なるほど、確かにそうですね。
木 村
そういう目線で、どうやって食べてるのかなって観察してると、一口の量がでかいんですよ。早く食べたいって思っているばっかりに、ご飯をつかむ量が多いからもう口パンパンにして。
ターニャ
なるほど。
木 村
そうすると、なかなか噛めなくて、飲み込むまでにすごい時間かかってるんですよ。
だからそこを改善したらいいんだなっていうのが、わかってくるわけ。摑む量を減らして飲み込むまでの時間を減らしたらどうかっていうので、ちょっと試してもらったら、ちょっとだけ早くなりました(笑
ターニャ
へー、なるほど!
木 村
そう、だから、例えばこんなくだらない話でも1個ずつ1個ずつ情報を分解していくと何か解決策が見えてくる。だから映画を見たときにどこが面白いのかわかんない作品に出会うこともあるわけですよ。そうすると僕は今のご飯の話と同じように、分解していくんですよね、作品を。入口はどういう入口なのか、どこで何がきっかけで展開をしていくのか、その展開がどういうふうになったのか、それがどういうふうにラストの結末に繋がってんのかっていうのを分解して考えると、ここがお話の肝だっていうのが見えてきて、その肝をそのまま伝えるのか、どこかを引き算して、情報を期待に変えていくのかと考えるわけです。
ターニャ
なるほど。
木 村
何を言わない方が面白く見えるのかっていうところを、悩んだときは分解するっていうことを常に心がけてやってる感じです。
ターニャ
なるほど。これ全然あれですけど、その分解、木村さんってやること絶対多いじゃないですか。その分解するタイミングは、そう思ったらすぐやられてるんですか。それとも何かTODOに入ってるんですか?
木 村
そうですね。これって、いつ思いつくかっていうのが難しいんですよね。
ターニャ
そうですよね。
木 村
分解しようと思って分解できるとか、良いアイディア出そうと思っても、すぐその場で出るわけじゃないので、アイディアを出す脳みその動かし方みたいなところも工夫しながらやってます。
ターニャ
なるほど。それはすごく気になりますね。ちょっと、ぜひそれも、次か次の次かでお願いします
木 村
わかりました。
簡単に言うとね、スキーのジャンプみたいな感じなんですよ。
ターニャ
スキーのジャンプ!?
木 村
アイディアを考えるっていうのは、リフトに乗って上まで上がります。棒の上に座ってセットします。風向きを見てスタートして、いいタイミングで、踏み切るとアイディアが出るみたいな、1個のルーティーンになってます。それが僕のアイディアを出すっていうこと。
ターニャ
では、そのリフトのタイミングと、セッティングするタイミングと、追い風のタイミングと、飛ぶミーティングがどういう時なのか、ぜひ教えてください。すごく楽しみです。はい、ありがとうございます。
ありがとうございました。もうすごく次回が楽しみなので、すぐ聞きたいなというところですが本日はこちらで終わりにしたいと思います。KITT RADIOでは、リスナーの皆様からのご質問も募集中でございます。概要欄に記載のメールアドレスに日々の生活に役立てたい、こんな話を聞きたいなど、ぜひお送りください 。
はい、では本日も以上でございます。木村さんありがとうございました。
木 村
ありがとうございます。
<END>
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