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【KITT RADIO|マーケティングあれこれ雑談 #16】感情移入の法則

2024-05-09更新

マーケティング目線で世の中を見ると、見えるものが変わってくる!

映画の宣伝プロデューサーが日々考えていることをあれこれ雑談す
「KITT RADIO|マーケティングあれこれ雑談」

出演:木村徳永さん(KICCORIT)、ターニャ(KIQ REPORT編集部)

 <#16のキーワード>
・映画『パスト ライブス/再会』を観て
感情+同情×時間=感情移入!?
・時間に生まれる余白の重要性

 

気になるキーワードがあったら下記をチェック!

【PodCast】

番組では宣伝プロデューサーに聞きたいことなど、リスナーの皆様からの質問も募集中!
その他、ご意見・ご感想はこちらまでお寄せください。

 

YouTubeやテキストでご覧になりたい方は下記よりどうぞ。

【YouTube】

【Text】(文字起こし)

ターニャ
木村さん、お久しぶりです。

木  村
そうですね、ちょっと久しぶりですね。

ターニャ
ちょっと時間が空いてしまいましたが。

木  村
最近はどうですか、映画見てますか?

ターニャ
最近はですね、映画館に行けてないんですよ。見たい映画は溜まってるんですけど、映画館には行けてないんですよね。

木  村
見たい映画はあるけど、見るタイミングがなく、気づくと見逃してるっていうパターンですね。

ターニャ
そうなんですよね、知らないうちにみたいのが上映終了してたパターンとかもあって。

木  村
それは宣伝が効いてないですね。早く見なきゃっていう気持ちにさせてもらってないってことですね。

ターニャ
そうですね。確かに優先順位としては下げちゃってるところありますよね。

木  村
僕ね、最近あれ見たんですよ。『パスト ライブス/再会』って知ってます?

ターニャ
知ってます!

木  村
面白かったです。泣きましたね。
僕、結構ラブストーリー好きで、いろんなパターンのラブストーリーもさんざん見てきてるから、もうちょっとお腹いっぱいだなみたいな感じもあって、年齢も年齢だし、もう楽しめないかもしれないななんて思いながら、見に行ってんですよ。

ターニャ
はいはいはい。

木  村
あれ見ました?見てないですか?

ターニャ
私飛行機、旅行行ったときに飛行機で見ました。

木  村
あれってすごい単純な話じゃないですか。子供のときに好きだった相手と大人になって再会する話。もうそれだけですよね。

ターニャ
うん、そうですね。

木  村
あれ感情移入しますよね。

ターニャ
いやー、でも木村さんの方がきっと刺さり度高そうだなって。

木  村
え、なんで?

ターニャ
私は、何だろう、なんか大人なラブストーリーですよね、あれ。

木  村
そうですね、大人のラブストーリーですよね。

ターニャ
そうですよね。だから私まだ子供なのかな、いやすごい良かったんですよ!

木  村
うん。

ターニャ
でも涙は出てこなかったなと思って。

木  村
これまだね、見てない方もたくさんいるからあんまり言えないけど、ここで泣くんだろうなって思ってたら、違うとこで泣きましたね。

ターニャ
どこなんですか??

木  村
それに僕はめちゃくちゃ驚いた。

ターニャ
ふーーん!あれはちょっといろいろ思うことがありますよねなんか、それぞれの立場に立つと、何か考えちゃうことがありますよ。

木  村
そう、これ映画ってやっぱり、いろいろ思うことがあるとか、それぞれの立場によって見方が違うわけじゃないすか。

ターニャ
はい、本当にそうですね。

木  村
そう。やっぱりどこに感情移入するのかっていうのって、本当に映画ならではだなっていう気がするんですよね。

ターニャ
確かに、そうですね。

木  村
なんか最近、感情移入ってなんだっけっていうのを改めて考え始めてて、感情移入って何だと思います?考えたことないでしょあんまり。感情移入ってって何だっけって。

ターニャ
なんだろう?でも何となく何かその人の気持ちになって、心が動かされてるみたいな感じなんですかね。

木  村
そうだよね。そこにいる主人公の気持ちに憑依するみたいな感じが感情移入ですよね、きっとね。

ターニャ
うん。

木  村
じゃあ果たして、どういう条件が揃うと感情移入するのかっていうことを考えていくと、そのキャラクターの詳細な説明をされても、それじゃ感情移入しないじゃないですか。

ターニャ
確かに。

木  村
この人はどこ生まれで何歳でどういう人生を歩んでますって、詳細に説明されても、興味は持つけど、移入はしないですよね。

ターニャ
そうですね。確かに。

木  村
そうなんですよ。では、何が揃うと感情が動くんだろうっていうところをちょっと考えてたんですけど、人間ってそもそも、動物の本能として、「共感」っていう感情を持ってるわけですよ。共感はするでしょう?なんか、いろんなものにも共感するし、いろんな人にも共感するし、これって人間特有の能力じゃなくて、そもそも動物に備わっている。本能らしいんですよね。

ターニャ
ええ!そうなんですね!

木  村
生きるための本能、なんかねどっかで実験したのを読んだことがあるんですけど、マウスの実験で、何か危険を察知したマウスがいて、ピタッと相手に襲われないように、静止をしているネズミが1匹いると、その周りにいるマウスも、何が起こってるか状況はわかんないけど、同じようにフリーズするっていう結果になるんですって

ターニャ
あーそうなんですね。

木  村
そう。それってすごいなと思って。だから我々も共感っていろんな共感があるじゃないですか。本当はそう思ってないけど、その人に合わせた方がいいかなみたいな共感だったりとか、うまく合わせてかないといじめられちゃうからうまくここは合わせておいた方がいいんじゃないかみたいなこととか、それも生きていくための本能が、そういう判断をさせてるところもあると思うんですよね。

ターニャ
そうですね。

木  村
そう。共感をすれば感情移入するのかっていうと、そこだけじゃなくて、同情っていうのが人間にしかない。感情らしいんですよ。同情って相手の気持ちを理解して助けてあげたいって思う気持ち。

ターニャ
はいはいはい。

木  村
そう。だから共感して、同情するとちょっと感情が動いてくるわけですよ。

ターニャ
なるほどー!

木  村
そう、かわいそうだなとか、痛そうだなって思うだけだと共感で止まっちゃうんだけど何とかしてあげたいって思う気持ちがもう一歩その状況に自分を近づけるっていうところがあると思うんですよね。だからまず前提としては、共感と同情っていうキーワードが感情移入に繋がってくるなっていうのにだんだん気づいてきたんですけど。

ターニャ
はい。

木  村
ただね、これだけじゃまだ感情移入しないんですよ。これが同情したとしても、いや、こんなことがあって大変だったんですよってなって、何とかしてあげたいなって気持ちが起きたときに出る言葉って、「大変ですね。何かあったら手伝いますから言ってくださいね」みたいな。これって感情移入してないじゃないすか。

ターニャ
そうですね、確かに。

木  村
意外と他人事のまんま終わってるっていうか。
それがもう一歩進むには、時間が大事だなと思うんですよね、時の流れ。時の流れっていうのが状況を深く表現する。だから例えば私はずっとこの状況で悩んでるんです。もう2年もずっと悩んでるんですっていう時間の長さが表現されると、えっそれは大変ですね、何かできることないですかっ、ていう気持ちがもう一段深まるじゃないですか。

ターニャ
確かに、はい。

木  村
そう。だからこの共感と同情+時間っていうのが三つ揃ったときに感情移入するんじゃないかなって思うんですよね。

ターニャ
なるほどー、はい。

木  村
で、果たしてこれ合ってんのかなと思って、この『パスト ライブス/再会』のキャッチコピーを見直してみるわけですよ。そうすると「24年間すれ違った運命の相手とNYで再会の7日間、ふたりの恋のゆくえはー。」って書いてあるんですよ。
結構キャッチコピーにしては長いんですよね、

ターニャ
確かに。

木  村
そう、だからこれ、いけてない上司がこれちょっと長すぎるから短くしろよとか言われた場合はどうなるかっていうと、この24年間みたいなこととか、7日間みたいなことは削除すると「すれ違った運命の相手とNYで再会、ふたりの恋のゆくえはー。」ってなっちゃうわけですよ。

ターニャ
なるほど、はいはいはい。

木  村
そうすると、このコピーの中から時間っていう要素を抜いちゃうと、もう重みというか深さが全くなくなっちゃうんですよね。

ターニャ
そうですね、確かに。

木  村
そう、だからこの24年間すれ違った運命の相手と再会っていうこの24年間っていうのがめちゃくちゃ大事なわけですよ。そうすると、自分だったらどうかなっていう、そのそこにいるキャラクターのことを想像するだけじゃなくて、自分ごとになってくるんですよね。だから何かこの時間っていうことをキーワードにいろいろ考えていくと、映画の中の登場人物に感情移入する瞬間って、あっこの人今何考えてるんだろうっていうときだったりするじゃないすか。

ターニャ
はい、はい、はい、確かに。

木  村
だから、セリフの応酬で、バンバン展開が速く動いてるときって、ちょっと感情移入する隙間がないですよね。

ターニャ
うん、そうですね、確かに。

木  村
だからやっぱり時間の流れがしっかりとあるとき。

ターニャ
うーん、なるほど!

木  村
そう、『パスト ライブス/再会』でいうとね、2人が一緒に学校から帰る、2人で歩いてるシーンがずっと続いて、説明型の作品だったらそこでいろんな会話がされるわけじゃないですか。「行っちゃうの?」「行っちゃうわよ」「行かないで欲しいな」「でも行かなきゃいけないんだからしょうがないじゃない」みたいな会話があるはずなんだけど、あの作品の本当に素晴らしくて感情移入するポイントとしては何も喋らないで歩いてますよね、あの映画。

ターニャ
そうですね、はい。大人になってからもそうですよね。時間が確かに経っていく、だからこの人たち何考えてんだろうって確かに思うなって今聞いててすごい思いました。

木  村
そうするとやっぱ余白が、隙間を生んで、僕らに考える余地を与えてくれるわけですよね。

ターニャ
なるほど。

木  村
あっ今何考えてんだろう、今何感じてるんだろう。ちょっと視線が動いたけど、何を見つけたんだろうみたいなことって、こっち側に答えを預けてくれるじゃないすか。

ターニャ
そうですね。

木  村
そう、その瞬間にやっぱり完全にそのキャラクターに憑依してるなって思うんですよね。だから人への感情移入もそうだし、映画って人だけじゃなくて、そのシチュエーションにも感情が動くし感情移入するじゃないですか。

ターニャ
はい、そうですね。

木  村
だからこの人何考えてんだろうだけじゃなくて、その場にもし自分がいたらどんな気持ちになるんだろうっていうのも、一つのその空間に対する感情移入の一つだと思うんですよね。

ターニャ
はいはいはい。

木  村
その空間を想像させるにはそれも同じだと思うんですよ。時間っていうのがとっても大事だと思うので。例えば、駅から2分です。っていう表現と、駅から歩いて20分っていうのと、駅から歩いて20分かかるけどその20分の間に商店街を抜けていくと、その先に公園があって、さらに奥にあるんですって言うのと。一番最後の時間という情報に、少し説明が入ると、頭の中でも、その空間のイメージが絵として出てくるじゃないですか。

ターニャ
そうですね、そうですね。

木  村
でもそれが時間っていう表現が入ってこないと、駅から商店街を抜けて公園があってその先にあるんですっていうことだけ言うと、映像が流れてかないんですよね。

ターニャ
確かに!そうですね。

木  村
だからそこに歩いて20分っていう時間を伝えることで、そこに概念としての空間が生まれるから、そこに自分で作り出した空間の中に自分が入っていくっていう感じが想像しやすくなる、これが感情移入だなって思ってて。キャッチコピーとか物語とかあらすじとかいろいろ書くことがたくさんありますけど、やっぱり映画のシチュエーション設定をきちんと想像してもらいたいし、主人公の気持ちにも共感してほしいわけじゃないですか。

ターニャ
はい。そうですね。

木  村
そうだからそれをしっかり伝えようとしたときに、間違っちゃうのはなるべくディテールを細かく伝えれば伝わるんじゃないかっていうふうに思ってしまいがちなんだけど、そこには大事な要素としては、時間軸っていうことも大事だし、言わずに余白を残してあげるってこともとっても大事だなっていうふうにすごく思うんですよね。

ターニャ
なるほどなるほど、確かにそれは、そうですね。
ただ情報を与えられてもあれだし、でも何もないと駄目だからその時間っていうところの一つわかりやすい指標の中で、考える余地があるっていうところがなるほどなんかすごいミソですね。確かに!今とても伝わりました。

木  村
これこそがやっぱり、映画じゃなきゃできないとこだと思うんですよね。だって無言で歩き続ける5分間があったとしたら、これテレビドラマだったらちょっと放送事故になっちゃう感じしません?

ターニャ
確かにやばいってなってTwitterが騒ぎ出します、Xが。

木  村
そうだからやっぱりテレビっていうのは限られた尺があるから、展開で繋いでいく感じですよね。セリフと展開で。もちろん僕はテレビ大好きだから、そういうどんどん進んでいく展開っていう作品も好きだし、映画でもねそういう作りの作品はすごくテンポが良くて、見やすいから好きなのだけど。

やっぱり海外で評価されている日本映画ってどんな感じなのかっていうと、やっぱりこの時間のコントロールがしっかりされている作品。だからこそ感情移入ができる作品っていうのが、海外で評価されてるんじゃないかなって思うと、やっぱりこの日本人ならではの時間の使い方、時間の表現の仕方っていうのは、やっぱりあるんじゃないかな、個性としてあるんじゃないかなっていうふうに改めてちょっと思いますね。

ターニャ
なるほど、それは本当そうですね。
今おっしゃってた、本当に日本だからこその時間っていうのがありますよね。

木  村
そう。でも『パスト ライブス/再会』は日本じゃないじゃないですか。韓国じゃないですか。これが不思議なとこですよね。

ターニャ
確かに。

木  村
国を越えても、同じ感情同じ時間が流れてて、同じ感情になれるっていうところがやっぱり素敵だなって思うし。

ターニャ
いいところですね、映画にしかできない映画でしか体験できないことでもありますね。

木  村
ね、そうですね、はい。
今度感情移入できそうな作品があったら、こういうことを考えながら見ると、感情移入できなくなっちゃうんで、何も考えずにぜひ見てください(笑)

ターニャ
そうですね。でもなんか時間を楽しめる作品なんかに出会えるとまた新しい見方ができる人が増えそうだなって、なんか今日のお話を聞いて思いました。私自身も何かまた映画が新しく楽しめそうな気がしました。ありがとうございます。

木  村
はい、ありがとうございます。

ターニャ
では本日はこれまでとさせていただければと思います。そしてKITTラジオでは、リスナーの皆様からの質問を募集中です。概要欄のメールアドレスに日々の生活に役立てたい、こんな話を聞きたいなど、ぜひお送りください。本日もありがとうございました。

木  村
ありがとうございました。

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