ニートのプロフェッショナル。人生はゴロ寝と唐揚げ棒でできています。

就職？いずれは、ね。社会復帰？気が向いたらね。そう言い残して、今日もタマ子はジャージ姿で父親に毒を吐きながらコンビニの揚げ物をむさぼります。目覚ましは鳴っても心は鳴らない。これぞ現代ニート道、完成形です。

でもなぜか、彼女のだらしなさは見ていて不快になりません。それどころか、「ここまで吹っ切れてるなら逆にアリなのでは？」とすら思えてきます。この映画の恐ろしいところは、そこです。

「今日、ゴミ出ししかしてない…」と自己嫌悪しているそこのあなた。安心してください。タマ子はゴミ出しすらスルーして、昼間から惣菜と昼寝のループに突入しています。あなたは、すでに十分すぎるほど立派です。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
ダニエル・プレインビュー（ダニエル・デイ＝ルイス）

金と成功の亡者になると、最終的に誰もいなくなります。

この男、働き者なのは間違いありません。でも働き方が間違いすぎています。石油掘削で巨万の富を得るものの、その過程で友情？家族？人間性？全部採掘済みです。心の中はすっかり枯渇し、残ったのは札束と誰もいない大豪邸だけ。

「もっと稼がなきゃ」「副業しようかな」なんて、ちょっと欲が顔を出し始めたら、まずこの映画を観てください。欲望のゴールテープを切った先に待っているのは、拍手でも賞賛でもなく、むせ返るほどの虚無です。

コンビニのレジ横に並んだ唐揚げ棒あたりで欲望を発散しておくくらいが、人間としてはちょうどいいんです。

『ウォルフ・オブ・ウォールストリート』
ジョーダン・ベルフォート（レオナルド・ディカプリオ）

人生がずっと飲み会の二次会みたいな男です。

成功してもなおブレーキの壊れたダンプカーのように突っ走る男、ジョーダン・ベルフォート。株で荒稼ぎした彼は、人生そのものをバブルの残り香で燻製にし、気づけばクスリと女と違法行為のミックスグリル状態です。

「人生、楽しくなきゃ意味ないだろ！」と叫びながら階段を這い上がるシーンは、まさに“人生の転落物件”を体現した名場面。すべてを失っても、どこか勝ち誇ったような笑顔を浮かべている彼を見ると、逆にこちらが正気に戻されます。

最近ちょっと散財が過ぎたな、と思ったらこの映画をどうぞ。少なくともあなたは、会社の経費でヨットを沈めてはいないはずです。ええ、まだ大丈夫です。

『ファーゴ』
ジェリー・ランディガード（ウィリアム・H・メイシー）

「小物が一発逆転を狙うと、こうなる」のお手本です。

借金まみれのジェリーは、「よし、妻を誘拐して義父から身代金を巻き上げよう！」という救いようのないバカ計画を思いつきます。もちろん計画は秒で破綻。雇ったチンピラはポンコツ、死人は増え、最終的に人生ごと詰みます。

彼の情けない顔は、まさに“社会に負けた男”の完成形。それでも「なんで俺だけ…」という顔でカメラ目線をキメ続けるジェリーは、ある意味でプロフェッショナルです。

「最近、副業で一発逆転したいな」と思った人、この映画は未来の自画像です。今すぐ手を引いて、いつものカフェでホットコーヒーでもすすりましょう。それで、いいんです。

いかがでしたか？

彼らの見事なまでの堕落と迷走っぷりを見届ければ、もうこれ以上自分を責める必要なんてありません。むしろよくやってます。いや、本当に。人生、たまには止まったっていいんです。ソファでゴロゴロして、スマホで無駄にアプリを行ったり来たりして、気がついたら一日が終わっていた。完璧じゃないですか。それが今のあなたの“ベスト・ライフ・プラン”です。

では、最後に。深呼吸をして、こうつぶやきましょう。

「明日から本気出す。たぶん」