業界人インタビュー

【ENDROLL】「選曲の鬼」スタートレーラー合同会社 横山裕一朗さん ~前編~

2024-02-22更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

今回は、劇場予告・TVCM・WEB動画・屋外広告などを手がけるスタートレーラー合同会社の横山裕一朗さんにインタビュー。

前編では、『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の予告・TVCMや、ビジュアルボイスドラマ「ウルトラセブン IF Story 『55年前の未来』」の本編監督、『機動戦士ガンダムSEED』スペシャルダイジェストの編集など、劇場予告にとどまらず様々なエンタメコンテンツを手がける横山さんが、なぜ映像制作に興味を持ち、現在の道を選んだのか、その過去に迫ってみた。

★【ENDROLL】「仕事で遊ぶ」スタートレーラー合同会社 横山裕一朗さん ~後編~

 

映像制作への情熱と軌跡

横山さんに転機が訪れたのは中学生の頃。それ以来、家庭用ビデオカメラで映像制作に没頭!そして、その先に待ち構えていた夢の実現とは…?

 

KIQ:現在の主な業務は?

横山:メインは映画の予告編のディレクターとして、予告編演出のお仕事をさせていただいています。他にもTVアニメや配信コンテンツのPVなど、ありがたいことに様々な作品の様々な映像を担当させていただいています。

KIQ:映像制作に興味をもったきっかけは?

横山:初めから予告編の仕事を目指していたわけではなくて。映像制作に興味を持ったのは15歳の時。中高一貫校だったんですが、毎年、高校3年生の卒業式では、卒業生が自ら作った答辞映像を流す風習がありました。参列した式で、先輩たちの映像が流れた時、会場中が大ウケして。その時「学生でもこうやって映像を作れるんだ!」と一つの感動を覚えたんです。

KIQ:へー!

横山:それで、母に「うちも家庭の記録を残した方がいいと思う」とかテキトーなことを言って(笑)、ビデオカメラを買ってもらいました。当時のメディアはminiDVでSD画質。怪獣フィギュアを使ってコマ撮りしたり、弟2人に無駄に戦ってもらった映像に、ビデオカメラとTVとNintendo64を繋げて、ゲームの効果音をリアルタイムでアフレコしたり、「ザ・ロック」のサントラをBGMにしてみたりとかして遊んでました。

KIQ:中学生で既に現在につながることをされていたんですね。

横山:高校は自分で映像の部活を作って、Adobe Premiere 6.5とかをいじってました。最初で最後ですが、受験そっちのけで出品した第一回映画甲子園で特別賞をいただけて、運良く大学も日芸(日本大学芸術学部)の映画学科に進めました。自分たちの卒業式の答辞映像も、中心となって撮影や編集をしながら、学年みんなで一生懸命作ったのが良い思い出ですね。

KIQ:初めは予告制作というよりは映画制作の方に興味があったんですか。

横山:そうですね。小さい頃からウルトラマンが大好きで、在学中に「あー小さい頃の夢を追いかけてるのか」と気づいて、円谷プロさんへの就職が再び夢になりました。今思うと就職氷河期ど真ん中。マイペースにもほどがありますが、幸運なことに大学4年生の時、ウルトラマンの制作現場にインターンシップで監督助手として参加でき、初めてクレジットに自分の名前が載りました。感無量だなと思い、じゃあ次に何をしようかと考えたときに思い浮かんだのが予告編ディレクターでした。

 


(幼稚園の頃)

KIQ:なぜ予告編のディレクターだったんですか?

横山:昔から映画のサントラがすごく好きで。ある時サントラCDに予告編で使われている音楽が入っていないことに気づいたんです。調べてみると、予告編音楽らしきものがあると。そこから、予告編自体にすごく興味を持つようになりました。大学の先生に相談したら予告編制作会社を紹介してくれて、採用面接を2回受けて、入社したという経緯です。

KIQ:予告編の音楽に惹かれたことがきっかけだったんですね。

横山:そうですね。入社初日、YouTubeで聞いていた予告編音楽のCDがずらーっと並んでいるのを見て「IMMEDIATEがある!やば!」とテンションが上がったのを今でも覚えています(笑)

 気持ちいい効果音は本能でわかる!?

横山さんは、“選曲の鬼”と呼ばれるほど予告編の音楽や効果音について極めている人だ。そんな横山さんが影響を受けた人物とは?

KIQ:これまで何度か一緒にお仕事させてもらっていたなかで感じたのは、音楽や効果音の気持ちよさみたいなのをすごく追求していますよね。

横山:周囲やお客さんからは“選曲の鬼”とたまに言われます(笑)自分が使おうと思っていた曲を、先に他社さんに使われてしまうと悔しかったり、でも過去に自分が使った曲を他の方が違う使い方をされていると、とても勉強になりますね。

KIQ:こういう効果音をつけたら面白いだろうなみたいなことって、参考にしてるクリエイターの方がいらっしゃったりするんですか。

横山:特定の方はいませんが、海外予告や本編スタッフのインタビュー、特にアクション監督のアクション理論、みたいなものを参考にすることはありますね。例えば、相手への打撃のテンポを「パン!パン!パン!」ではなく「パンッッ!パパッ…パーーン!」とか。

KIQ:効果音ってすごく奥深いですね。

横山:効果音のプロではないので本当にあくまで持論ですが、打撃1個とっても奥深いと思います。「バチン!」で終わるのもアリですが、宣伝的にもっと派手にしたければ、振りかぶってから相手を殴るまでに、衣擦れがあったり、拳が空を切ったりするので、自分にとっては音としては少なくとも3手くらいあるイメージです。(例:『犯罪都市 NO WAY OUT』本予告https://www.youtube.com/watch?v=mHSs-r7hmU8

KIQ:音やリズムが気持ちいいというのが本能的にわかる…?

横山:もしそんな生き物なら嬉しいです(笑)あとは細かい音も心地良いですよね。布がはためく音とか。多分80〜90年代の香港アクション映画の影響だと思います。ドニー・イェンとか大好きなので(笑)

KIQ:ドニー・イェン!彼の作品で見ていて気持ちがいいところってアクションが終わった後に決めるというか、見得を切るじゃないですか。あれが私はすごく好きですね。

横山:そうですよね!見得を切ることの大切さ。「シャクラ」を担当させていただいた時も思いましたが、ある種、見得を切るために前後のアクションシーンがある気もしていますその部分の“止め”は映像演出的にもすごく緩急があるし、シンプルにかっこいいですよね!(例:『シャクラ』本予告https://www.youtube.com/watch?v=NIdu6nHIQOE

 

後編では、業界でも特殊な予告編ディレクターの仕事内容について詳しく聞いてみた。また、横山さんが予告編を作るうえで大事にしていることや、今後の映画体験の提示について語ってくれたことをお届けする。

★【ENDROLL】「仕事で遊ぶ」スタートレーラー合同会社 横山裕一朗さん ~後編~

 

 

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