調査レポート
34th東京学生映画祭に行ってきました!『花心 ファーシン』トークショーレポート
8月18日~20日、渋谷ユーロライブにて「34th東京学生映画祭」が開催されました。
映画祭では、学生たちが制作した作品を全国から募集し、コンペティション形式でグランプリを決定しています。本年度は、応募があった216作品の中からセレクトされた21作品が上映されました!
今年も学生たちの熱い夏がやって来た!34th東京学生映画祭開催(8月18日~20日)@渋谷ユーロライブ
その中からKIQ REPORTでは、初日に上映された『花心 ファーシン』を取材しました。今回は、上映後に開催されたトークショーの内容の模様をご紹介します!
『花心 ファーシン』は、安本未玖(やすもとみく)さんが京都芸術大学在中に卒業制作として手掛けた長編作品です。安本さんは本作で監督・企画・脚本・撮影を担当しています。
写真家の祖父・哲郎の写真展の手伝いをする14歳の祐二が、カメラに興味を持ち始めた矢先、哲郎の訃報に接します。そんな時、哲郎の被写体の女・麗(れい)と出会ったことで、互いに祖父の死と向き合っていく物語です。
安本監督「祖父へのラブレターを作りたいという思いから制作に至りました」
上映後には、安本監督と、主人公・祐二を演じた岸水小太郎さん、ヒロイン・麗を演じた紗葉さん、そしてゲスト審査員の首藤凛さん(監督作『ひらいて』など)が登壇!!
撮影時のエピソードから、安本監督の本作に込めた熱い想いまで、終始和やかな雰囲気でトークが繰り広げられました。
まず、作品を観た感想を率直に聞かれた首藤さんは「映像など本当にいろいろとすごいなと思って観させていただきました。安本さんは撮影もされているということですが、カットワークの編集などもそうだと思うんですけど、独特なカット選びだなとすごく思い、これはあくまで私の感覚ですが、今、現在性を持って起きていることよりかは、誰かの記憶とか、誰かとの会話を思い出すときの頭に流れる映像みたいな感覚がして、どういうふうにカットを選んでいったのかが気になりました」と絶賛の言葉を寄せると共に、安本監督の撮影方法に興味深々の様子をみせました。
質問に対して安本監督は「いくつものカットの中から一つを選んでいるというよりかは、もうそれを目がけて撮影しているという感じです。撮影をする前にもある程度構想はありますが、実際、現場に立ってからカットを選びます。今回の作品は自分が主人公にかなり近い存在のため、主観的な映像が多くなっていると思います」と回答。俳優のお2人も監督の撮影時のカメラの距離の近さが印象的だったようで、岸水さんは「撮影時に寄り添ってくれている感じがずっとあり、監督が人物にのめり込み、主観で撮っている感覚がこちらにもありました」と語りました。さらに、安本監督は撮影時に世界観にのめり込んでしまうが故に長回しも多いようで、これには紗葉さんも「最大14分間回してましたね(笑)」と、撮影時の苦労を明かしました。
左から 岸水小太郎さん、紗葉さん、安本未玖監督、首藤凛さん
また、本作の構想は、安本監督の写真家である祖父が亡くなったことがきっかけとなって生まれたということで、本作に込めた想いについて監督は「この映画を通してなんとか祖父に近づきたいという思いや、祖父へのラブレターを作りたいという思いから制作に至りました」と話し、本作の題材となった祖父との思い出のエピソードや心に残っている言葉などたっぷり語ってくれました。
さらに、安本監督の作品は自分の撮りたい題材をとっているという印象を受けるが、何をモチベーションに制作していますかという質問に対して、安本監督は「自分が生きてきた中で気づかないうちに感じていることとか、人生経験から作品に落とし込んでいます。何を撮りたいかとか、どんなものを作りたいかというよりかは、自己発信の気持ちで、自分はこういった人間ですというのを作品にして、誰かに認めてもらいたいというか、自分の世界に入り込んで欲しいっていう気持ちがどこかにあるのかなって思っています。今何を撮るべきだとかいうものはあまり存在せず、今、これを撮らないといけない!っていう気持ちに気づいたらなっています」と映画を撮る動機について率直で熱い想いを語ってくれました。この言葉を受けて首藤さんは、「私も学生の時ってすごくそうだったなって思いました。撮りたいものが今すぐ撮れる、それが自主映画だなって…」と自身の学生時代に想いを馳せている様子でした。
その後も監督は、本作でこだわった部分について、自然光を多く取り入れたことや、本作は写真をテーマにした作品のために画面の中に必ずフレームが入るようにしたことなど、多くのことを語ってくれましたが、残り時間もわずかとなり、いよいよ最後の質問に。
最後に、監督の今後の展望について聞かれると「本作が卒業制作なので、今後はフリーで活動していく中で、まずはどんどん作品を撮らないとなって今は思っています。作品を重ねていく中で、自分の色を見つけていきたいです。あと、今は自分で撮影も担当していますが、それだとやっぱりどこか主観でしかない気がして…。ひとまず誰かの撮影で、自分が監督をするということに挑戦してみたいです」と自分を客観的に分析したうえでの目標を教えてくれました。
以上、トークレポートでした!
編集部も今回、『花心 ファーシン』を拝見させていただき、特に映像の美しさに圧倒されました…!
トーク中も終始しっかりと自分自身の考えや思いを明確に語る安本さんに、感心するばかりでした…。
これからの活躍に注目です!
また、東京学生映画祭のスタッフのみなさま、お疲れさまでした!
KIQ REPORTは今後も、東京学生映画祭を応援していきます!
●『花心 ファーシン』
【あらすじ】
写真家の祖父・哲郎の写真展の手伝いをする祐二。カメラに興味を持ち始めた矢先、哲郎の訃報に接する。写真に“魂が吸い取られる“と言っていた哲郎を撮ってしまった過去の行動に後悔しながらも、写真の魅力に惹かれる祐二は、哲郎の被写体の女・麗と出会い私を撮って殺してと志願される。
【キャスト】
岸水小太郎、紗葉、鈴木一博、 嶋谷美輪、時岡怜美、早川聡、水上竜士、他
【スタッフ】
監督・企画・脚本・撮影:安本未玖
プロデューサー:中川美里
撮影助手:瀬戸邑佳、山田颯馬
照明:山田颯馬
録音:佐伯いずみ、冨山侑起
美術・衣裳:中川美里、長堀葵
助監督:瀬戸邑佳
公式X(Twitter):@farshin_movie
公式Instagram:farshin_movie
東京学生映画祭作品紹介ページ:https://tougakusai.jp/fashin/
●監督プロフィール
安本未玖(YASUMOTO Miku)
2000年7月8日生まれ。福岡県出身。
京都芸術大学映画学科映画製作コース卒業。
監督作:『浮かぶかたつむり』第23回ハンブルク日本映画祭賞受賞
『カンパニュラの少女』第33回東京学生映画祭実写長編部門 審査員特別賞受賞
X(Twitter):@twilight_00v
Instagram:twilight_00v
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