プロが見たこの映画
映画メディアのプロが語る「出演者のファンが、映画を観てくれるとは限らない!?」/武内三穂(トーキョー女子映画部 編集長)
私はいち映画ファン、そして紙媒体、WEB媒体の編集者、ライターとして長らく映画に関わってきました。映画をたくさんの方に観てもらうために、インタビューを載せたり、特集を組んだりとするわけですが、最近取材の現場で不思議に思うことがあります。一つ例に挙げると、黄色い声援が飛び交う、人気者が登壇する邦画のイベントで、舞台挨拶だけを観て、映画本編を観ずに帰ってしまうファンが少なからずいることです。お目当ての出演者本人を生で観られるだけで満足するのはわかりますが、その俳優が出ている映画をいち早く観られるチャンスを放棄する意図がわかりません。劇場公開が始まってからお金を払って観てくれるなら喜ばしいことですが、それでも映画を観ないで帰るとは、なんだか寂しくなります。イベントに来ただけでも、嬉しくてSNSに投稿してくれる可能性は大いにあるので宣伝的には目的を果たしているのかも知れませんが、とにかく気になるのは、ファンでも映画は観ないという人達がどれくらいいるのかということです。
トーキョー女子映画部では、イイ男ランキングという企画を実施していて、ここでの“イイ男”はルックス的な意味ではなく、個性や演技力なども含めて、俳優として魅力のある人というコンセプトでやっています。このランキングについては、トーキョー女子映画部の部員が映画好きの女性であるというところで、映画出演作でみせた演技力や俳優の個性が順位に反映されているほうだとは思いますが、若手俳優に関しては、知名度が結果に反映されている部分もあります。これがもし年に1回映画を観るか観ないかの一般女性の投票だったら結果はもっと違うでしょう。さらに前述の舞台挨拶イベントで映画本編を観ないで帰る人の話と合わせて考えると、一体どんな俳優に集客力があるのか悩むところです。ただ、手前味噌ですが、イイ男ランキングの結果から思うのは、映画ファンは、俳優の知名度だけでなく、印象に残る役柄を演じたり、俳優としての実力があるかは、しっかり見ているということです。だからこそ、俳優で映画を選ぶという感覚を持ってもらうためには、やはりその俳優の“演技”に引き込まれるという体験を、いかに多くのユーザーにしてもらえるかではないでしょうか。こうなると、鶏と卵の話になってしまいますが、人気者の“俳優としての魅力”をいかに伝えるかは、私達媒体にとっても課題だなと感じます。
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